越後屋の『学び合い』帳

東京の高校国語科教員。『学び合い』と授業とクラスと。

チャンク

先ほどのエントリーの補足。
【漢文】晏子之御 - 越後屋の『学び合い』帳

漢文を2学期最初の単元に選んだのは、

  • 主語
  • 述語
  • 目的語
  • 補語

という要素を意識できるようになってほしかったからです。

ごく単純に言えば、

何が、何を、何に、どうした。

という4点を明確に表現できるようになってほしい、ということです。
1学期の生徒の答案を読んでいるうちに、これを重点目標にすべきだと痛感しました。

漢文は、このようなカタマリ(チャンク)の視点で言葉を捉えるのに適していると考えました。理由は二つあります。

  1. 教科書編集の段階で、一文の文字数が少なくなるように配慮されている。
  2. 漢字だけが並んでいるので、カタマリを意識しやすい。

このような目的で漢文を取り上げたため、『史記』を読む前に導入として

夏休みの思い出を5文程度の漢文で書きなさい。

という課題でウォーミングアップしたのでした。

【漢文】晏子之御

課題0 指示に従い、教材文を①~⑰に分けなさい。

課題1 教材文を書き下し文に直しなさい。ノートに書くこと。
〈目的〉書き下し文のきまりを理解する。
〈クリア条件〉。教三四八頁の「書き下し文のきまり」を守っている。ミスは三箇所まで。

課題2 返り点が付いている理由を次の中から選びなさい。
〈目的〉述語・目的語・補語の関係に注目できるようになる。
〈クリア条件〉ミスは三箇所まで。
〈選択肢〉ア 目的語→述語  イ 補語→述語  ウ 動詞→助動詞  エ 前置詞の目的語→前置詞
 (教材文の任意の箇所を挙げる)

課題3 主語は「晏子」「夫」「妻」のうち、誰か。
〈目的〉正確に読む。
〈クリア条件〉ミスは四箇所まで。
 (教材文の任意の箇所を挙げる)

課題4 ④「意気揚々、甚自得也。」の際の、具体的なセリフを想像して答えなさい。
〈目的〉正確に読む。
〈クリア条件〉時代の状況と晏子の立場をふまえて考えている。

課題5 妻の言葉からわかる、晏子の様子と夫の様子の違いを答えなさい。
〈目的〉正確に読む。
〈クリア条件〉「晏子は~~なのに……」という対比で思考している。

課題6 妻の言葉を聞いて、夫はどのように変化したか。
〈目的〉正確に読む。
〈クリア条件〉変化する前と変化した後の両方を答えている。

課題7 実際に夫婦は離婚したのか。本文には書かれていないが、あなたの解釈を答えなさい。
〈目的〉本文に基づいて解釈する。
〈クリア条件〉「根拠」と「理由」の両方に基づいて判断している。
〈考え方〉
 ① 「根拠」とは、「本文のここにこう書いてある」と言えることである。
 ② 「理由」とは、「その記述はこういう意味だ」と言えることである。
 ③ 理由を考える時は「もし~~なら、……のはずだから」と、逆の状況を想定してみるとよい。
 ④ 根拠と理由のセットをできるだけ多く考えること。
 ⑤ 解釈はあくまでも仮説である。

課題7は最終的に200字作文の形式にまとめて提出(画像)。
課題答案の横に自己評価用のルーブリック。
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教材文はこちらから。
http://manapedia.jp/m/text/1971

アンパンマン

アンパンマンは顔が濡れると力が出ません。
彼はそういう人です。
アンパンマンに向かって

  • そんなこと言ってないで頑張れ。
  • 社会に出たら顔が濡れることだってあるんだから。
  • 顔が濡れても力が出せるように努力しなきゃ。

などと言っても、仕方ないのです。

今日の語り

無理しちゃってるかなぁ。
それとも、手を抜いているかなぁ。
いま自分に、仲間に、優しくしてるかなぁ。
それとも、甘やかしてることになるかなぁ。
その線引きは、その都度、考えていくしかないよね。
そういうことを考える勉強と、漢文の勉強と、同時にやってるんだよね。

根拠>理由>解釈

しばらく前から、以下の思考のプロセスを想定していました。

  1. 本文のどこそこに○○と書かれている。(記述)
  2. それは△△という意味である。(解釈)
  3. だから、〜〜と言うことができる。(結論)

真ん中の段階を雑にしてしまうと、他者に納得してもらえる説明はできません。

佐藤佐敏さんは、このプロセスを「解釈のアブダクション・モデル」として、

  1. 根拠
  2. 理由
  3. 解釈

という言葉で説明していました。
私がモヤモヤと考えていたことは、すでに論文になっていたのですね。先達はありがたいものです。
私は論文ではなく、一般向けの本で知りました。

思考力を高める授業

思考力を高める授業

小中の実践例も多く掲載されており、イメージしやすいのではないかと思います。
佐藤佐敏さんは「学級担任論」しか読んだことがありませんでしたが、国語科教育がご専門でした。まったく無知でお恥ずかしい限りです。

反面、「学習者集団は有能である」という〈子ども観〉と、「一人も見捨てない」という願いは強力だと
改めて心を強くしたのも確かです。「アクティブ・ラーニング」の捉え方も賛同しかねる箇所がありました。
しかし「学習の転移」を授業の目的にしている点は大賛成です。

規準・基準

(没原稿供養)

規準と基準

何ができればよいか(規準)が決まったら、どれだけできればよいか(基準)を決めることになります。

これが決まっていないと、実際に授業が始まってから大変困ることになります。

いわば、規準(のりじゅん)は向かうべき方向を示す標識です。規準がわかれば、どの方向に進むのかわかります。
一方、基準(もとじゅん)は、進む距離を示す標識です。「○○まであと何km」という情報を示すものです。
基準が曖昧なまま授業がスタートすると、教員がゴールだと想定していた手前で、生徒はゴールに着いたと思ってしまう事態が起こり得るのです。

最初に言ってよ

『水の東西』の例でいえば、「文章中の対比のペアを整理しよう」と言っただけでは、ペアをいくつ揃えればよいのか、わかりません。教員はペアを五つ揃えて目標達成だと考えていたのに、生徒は三つだと思っているかもしれません。自分は目標達成だと思っていたのに、授業の最後で「君は未達成だね」と言われてしまったら、ガッカリします。「だったら最初に言ってよ」と思うのではないでしょうか。

規準と基準をセットで決めておくことで、このような混乱を回避することができます。
生徒が安心して学習活動に取り組み、教員と生徒の信頼関係を築いていく上で、とても大切なポイントです。

目的・目標・手段の関係

(没原稿供養)

目的・目標・手段の関係

以前担任したクラスで、文化祭でかき氷を販売したことがありました。赤字を出すわけにはいかないので、目標は「2日間で1000食を売り上げること」となりました。そして、それを達成するために魅力的なレシピを考えたり、宣伝に力を入れたりしました。

この場合、1000食の完売が「目標」でレシピや宣伝は「手段」に当たります。もしレシピに凝るあまり1000食に届かなければ、目標達成にはなりません。一方で1000食売れさえすれば、レシピは平凡でも構わないわけです。大切なのは目標達成であり、その手段は一つとは限りません。「手段」の上位にあるのが「目標」です。

さて、文化祭の「目的」の一つに、クラスの団結を高めることがあります。この目的に対して、1000食の完売という目標を設定したわけです。「目標」のさらに上位にあるのが「目的」と言えます。だとすれば、他の目標もあり得たかもしれません。言ってしまえば、クラスの団結が高まりさえすれば、1000食に届かなくても構わないのです。

授業に即して

国語科の授業に即して考えてみましょう。教科書の教師用指導書には、「筆者の主張を理解する」などの目標が書かれています。しかし、大切なのは「その目的は何か」と考えることです。目的が意識されていなければ、たとえ目標を達成したとしても、生徒の学習は「やっただけ」で終わりになってしまいます。

自戒を込めて、確認しておきましょう。私たちは「語句の意味調べ」や「段落わけ」などの手段を考えることには慣れていますが、それ自体が目標だと勘違いしてしまうことがあります。「どのように」授業を行うかということに汲汲として、目的を見失いがちです。しかし、私たち教員は、目的や価値を語り、それに即した目標を掲げる必要があります。

目的を理解し、目標に賛同した生徒たちが主体的に学習を進めていくのがアクティブ・ラーニングなのです。

教材の価値≠目的

私たち国語科教員は基本的に「国語好き」ですから、教材(特に文学作品)の価値を知っています。『山月記』も『こころ』も高校生に読ませたいと思っていますが、それを読ませること自体が単元の目的ではありません。「教材の価値」と「単元の目的」を混同しないようにしたいものです。

単元の目的を設定するためには、一度教材から離れて学習指導要領を読むとよいでしょう。指導要領には本当にシンプルな指導事項しか書いてありません。どの事項を指導するためにその教材を用いるのか、イメージしやすくなるでしょう。

指導要領はシンプルすぎて曖昧だと思われるかもしれませんが、それをどの程度まで深めるかは、私たちに任されています。単元の目的を設定する上では、欠かせないものです。